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アメリカにいた折りインド人夫妻に招かれた時にも感じた。 「お前はライスイタのはずだから」というので、わざわざめしを炊いてくれたのを見ていると、米を鍋に入れて、水をいい加減に、お粥をつくるのかと思うぐらいじゃぶじゃぶと注ぎ、ふき上ると火を消して、いったん湯を捨ててしまう。
われわれがよぶ濃厚な重湯部分、分析してみれば、各種のアミノ酸もとけていて、日本人にとってはめしの味を左右する大切な部分を捨ててしまう。 ふたをしてしばらくおいてでき上り。
残った沈澱部分かれらのいうめしだ。 N尾氏によれば″湯取り法″である。
どうして湯を捨てるのか、ときくと、ねばるからだ、と答えた。 もともと粘りの少ない米の粘りさえ気にするかれらなのである。
私にはフォクをつけてくれた、かれらは手で食う。 手にとってしばらく何回か握りしめてつぶし、ほぼメシ粒がつぶれてヒメノリ的になったころにロに運ぶ。
黒い指のあいだから、つぶれたドウニョロニョロとでてくる。 手にはつかない。
つくほどねばっていない。 日本米であんなことをしたら、たちまち手にくっついて、収拾つかなくなることだろう。
いろいろ書いてきたつまり、これらが世界の米であり、その食べ方なのだ。 この方向はひとくちにいえば、徹底的なねばりの拒絶だ。

こういうことはよくいわれていることだ。日本の米の将来を占う上で意外に重要な要因になるのではないかと思う。 ある女子大学の寮で寮生全員に2週間パン食のみで過させるという実験を行なったことがあった。
悲鳴をあげるものも出るのではないかと予想されていたのだ。全員けろりとしたもので、「こういう実験は何回でもくり返してほしい」という学生さえあったということだ(J大学K教授)。 この話はいまの若い層の食生活の中で「主食」の座を追われつつあるめしの地位どんなものか、はっきりと物語っている。
K教授は「ふだんよりも食費を30パセントほど多くし、その分だけ、献立豊かになったことも影響したのであろう」といっておられる学生ごちそう(副食)の豊かなのをよろこんで、米のめしへの郷愁を覚えなかったのだとすれば、米の地位はますますあぶない。 パンとの競争と副食との競争において、2重に圧迫されて後退を続けているのが米の姿であるらしい。
このことは日本人1人あたりの米消費量の着実な減少にあらわれている。 ことに都市(人口5万以上)では昭和315年(年間百キログラム足らず)を戦後のピクとして着実に減りはじめ、だいたい3年間で10キログラムずつの。
へスで減っていっている。 横軸を年度に、タテ軸を年間1人当りの米消費量にとったグラフでも、直線を描いて右下に向って下降しており、もしこのペス続くとすると昭和514年か515年にはキログラムの線に達することになる。
まあ、いくらなんでもそんなことはあるまい。 種々の事情を考慮に入れれば、米消費量は結局1人当り年間50キログラムぐらいに落ちつくだろうというのがいまの観測のようだ。

子供を対象とした洋風志向度の調査では、魚と肉とどっちが好きかという質問には肉、味噌汁と牛乳なら牛乳、という現代っ子だ、ごはんとパンではごはんという答え出ており、″日本食派″にとっては心強い限りだ。 ごはんの食べ方にもいろいろあり、変りごはんやどんぶりめしは、もともと子供の好物だ。
パンだとこう器用にフィリングを変えることができないのも子供めし好きな原因の1つだろう。 たしかに、サンドイッチかカレーライスか、という設問ならかなりの子供がカレフィズをよろこぶだろうことは十分考えられる。
炊きたてのめしの香りをいつくし味噌の丸やかな舌ざわりと、あるかなきかの味を1生の友と人生を歎じ、めしの炊ぎ方のじょうずなのがよい嫁御、という、あの溺れるようなめしへの愛着ほど、こんにちの日本の若者の心と味覚から遠いものはあるまい。 カレーライス、チキンライス、オムライス、焼きめしなど″洋風″のたべ方で、やっとめしは新しい世代の中で座を占めていくことになるのかも知れない。
人口や食料の統計にはくわしくない、この米の人当り消費量の減少バターンは日本における世代の交代のバターンと1致しているか、少なくとも比例しているのであろう。 このことは、米の味をとやかくいわない世代が育ちつつあることを示す。
最近、米のまずくなったこと方々で話題となり、米が余って食べられなくなった1因を米の味に帰する向きもあるようだ。 ″いまもしほんとうにおいしい米を食べようと思ったらアメリカへ行かねばならない″などともいわれ 米がまずくなったこともたしかだ。日本における米消費量の減少に影響を及ぼしているのはめしが好きでめしの味にうるさい人たちがめしをたべなくなったからではないだろう。
こういう人たちは文句をいいながらも、米をたべ米食中心の食様式に執着している。 米消費量を減少させているのは、副食物を多くとり、澱粉源としては御飯でもパンでも意に介さない幼若年層なのである。
米の味に敏感だということは、その分だけ白いめしと1汁1菜ぐらいの、めしのつけ合わせ程度にしか副食をとっていない食生活の証明なのである。 あの電気炊飯器とともに家庭に導入されたのは、めしは簡単に炊けるもの、という、いやにお手軽な考えだろう。
洗うのにもしやもじでぐるぐると洗い、2、3度かき廻すだけ、予備浸潰もせず、あたふたとスイ″チを入れて、もう忘れていればでき上がる。 心をこめて炊け、などというのではない、ここには米という穀物の性質を無視した、昔の軍隊の炊事場にも似た大ざっぱさがあるのが気になる。
素材の味を生かして、心をこめてつくりましょう、などと教える料理学校めしの炊ぎ方のこのおおらかさはどうしたことだろう。 かつて貴重品だった米のめしは、いま台所の仕事としては最も低い次元のものとなっており、めしはまるで水か空気のように無味無臭の安手のものとなっている。
炊飯器のめしによって育った子供いま20歳前後を迎えた。 この人たち炊飯器にたよらない飯に(たとえうまいと感じたとしても)異質を感じ、特別の″料理″と感じる日も遠くはあるまい。

めしを食べないでも気にしない人たち、めしの味を気にしない人たちが作っていくこれからの日本の米食のバターンは、いままでとはずいぶん異なったものになることだけはたしかだ。 かつては「千5百秋瑞穂国」という古い日本の異名を思い出すまでもなく、日本の野を、野のある限り続く「美田」は豊かさの象徴だった。
「オテントサンと米のめしはついて廻る」などともいう。 米は日本人の食事のすべてだったし、庶民の哀歓は米にみつなっていた。
こんにち、夜は照明によって月夜よりも明るく、米は余る。 ひとりお金のみをめぐって、1喜1憂する経済大国日本なのである。
穀物の食べ方には粒のまま調理して食べる「粒食」と、いったん粉に挽いてから調理して食べる「粉食」(いり粉のようにこの順序反対になっているものもある)とに大別される。 米主として粒食されているのと対照的に、麦類、ことに小麦は粉食原則だ。
もともといり麦やあら挽き粥(日本の米の粥のような「粒食粥」とそばきのような「粉食粥」の中間に位置し、穀粒をなかば砕いて水と煮る。 穀類の加工品を表現する漢字について、現在中国と日本で混乱ある(というよりも日本での誤用)。

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